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江戸を楽しむ

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第六回

商家のファッション

 庶民の文化が開いた江戸時代。人々は職業や身分に応じた装いを楽しむようになりました。では風月堂のような商家は一体どんなファッションだったのでしょうか。
 
 江戸時代のファッションの特徴は、一目見ただけでその人の身分や立場が分かるようになっていたこと。例えば風月堂の近隣である日本橋に店を出していた呉服屋・白木屋では入店5年目までは店からの支給品の着物しか着用が認められず、8年目までは木綿しか着てはならない。9年目以降は冬の小袖や羽織に青梅藍縞の着用が認められ、太織りの無地の紋付を許されるのは12年目以降、黒紬紋付を許されるのは15年目以降。絹を身に着けられるのは18年目以降など細かく服装規定がありました。めんどうに思ってしまいますが、逆に言うと自己紹介をしなくても装いだけである程度の情報が相手に伝わるので、便利と言えば便利だったようです。

 大店の主人が好んだ装いは上田縞の着物でした。信州上田では戦国時代に真田昌幸・幸村親子が織物業を奨励したことがきっかけとなり、江戸時代中期には絹を使った高級品の上田縞が完成。富裕層に好まれるようになったのです。上田縞は高いだけでなく強い事も人気の秘訣。なにしろ大阪の陣で大活躍した真田親子にゆかりということで箔がつき、実際に「裏三代」といわれ裏地を三度取り替えるほど長持ちしたそう。裏地を三回もかえるということは、それだけ繰り返し使うという事。一枚の着物を大事に使ったんですね。

 ちなみに庶民の着物に使用できる色彩は、幕府による奢侈禁止令のために藍色・茶色・鼠色を中心にした地味なものに限定されていました。しかしそこは発想の転換で、それぞれの色で100種類以上のグラデーションを駆使して俗に四十八茶百鼠と言われるカラーバリエーションを作り上げていったのです。制約のなかで知恵を絞ってファッションを楽しむ江戸人の心意気。うーん、カッコいい!

本文イラスト:ほーりー

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