江戸を楽しむ

Enjoy Edo

第十九回

御月見の話

 江戸時代、旧暦で秋とされた7月、8月、9月は御月見イベントのハイシーズンでした。
 
 特に盛り上がったのが秋の真ん中=8月15日の中秋の名月。いわゆる十五夜です。この日は台風の影響が落ち着いて晴れることが多く、大陸から乾燥した冷たい空気が流れ込むため、気象学的にも一年で最も美しい満月が見られる日と言われているんですよ。
 
 また収穫祭としての性質もあり、お供えには稲穂に見立てたススキや、その時期に収穫される里芋などの野菜や果物が用いられました。現在の六本木の交差点辺りは芋洗い坂と呼ばれるほど芋屋が多く、御月見の時期は沢山の人でにぎわったといいます。
 
 江戸時代後期になるとお供えのラインナップに月見団子が加わります。

 江戸では三方に乗せるのは十五夜の満月にちなんで一寸五分(およそ5センチ)のまん丸の団子を15個。その他に、家族や奉公人が食べる小ぶりなモノを15×人数分用意しました。上方では一年の満月の数=12回に合わせて12個の団子を三方に。形は里芋の形に似せて先をとがらせるようにして作り、砂糖を加えた黄な粉をかけたといいますから微妙な地域差があったようです。

 面白いのは、地方によっては子供が他人の家の御供えの月見団子は盗んでもよいという暗黙の了解があったこと。神様への御供え物のお下がりを頂く直会のような感覚だったようです。この習慣は各地で〝御月見泥棒”として残り、現在では団子の代わりに御菓子を配っている所が多いんだとか。日本版ハロウィンのようで面白いですね。

 ちなみに、月見団子は相当な個数が必要なので、風月堂のような御菓子屋さんで買うのではなく、各家庭で当日の朝早起きして一家総出でハンドメイドするのが主流でした。
 
 2016年の中秋の名月、15夜は9月15日。今年は江戸風に、ご自宅で月見団子を作ってみてはいかがでしょうか。

本文イラスト:ほーりー

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