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第二八回

風月堂と明治維新

 いまから150年前、1868年に徳川幕府が支配する江戸時代が終わり、日本は明治新政府が主導する新たな時代に突入しました。いわゆる明治維新です。

 この歴史の大転換期は風月堂にとって受難の時代でした。風月堂は大名や老中といった幕府の重役から注文を受け、お茶席などで使う高価なお菓子を治めていた御用菓子商。

 しかし、幕末の混乱の中でお茶席の機会は激減。参勤交代も行われなくなり、風月堂の顧客であった大名たちが国元に戻ってしまいます。風月堂の暖簾を代々受け継ぐ大住家の過去帳によると、明治元年に3代目が、明治5年に4代目が相次いで亡くなっており、この時代を商人として生きることがいかに厳しかったかを物語っています。

 4代目の弟が30歳の若さで5代目になると、風月堂は宮内庁の御用品調進の依頼を受けました。普通なら喜んで引き受けるところですが・・・なんと5代目はこれを辞退しました。新時代になっても先祖から受けついだ徳川への恩顧の思い、また、江戸時代からすでに京都御所の御用達として仕えていた虎屋の黒川氏への配慮から導き出した苦渋の決断なのでしょう。律義だなぁ。

 そんな5代目が風月堂の暖簾を守るために活路を見出したのが洋菓子作り。実は風月堂、維新前から薩摩藩御用を務めており、戊辰戦争の時には軍用の黒ゴマ入りビスケットを納入するなどして洋菓子作りのノウハウを培っていたのです。大河ドラマ『西郷どん』でおなじみ、西郷隆盛も風月堂の軍用ビスケットを食べたかもしれませんね。
この路線変更が功を奏し、明治10年の内国勧業博覧会にはカステラ、ケーキ、リキュールボンボンを出展して鳳紋賞を受賞。「洋菓子の風月堂」の名声が全国に轟きました。

 江戸から明治へ。時代のニーズを的確にとらえ、しなやかに順応した風月堂。老舗の矜持と底力に脱帽です!

本文イラスト:ほーりー

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