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第三八回

春なのに〝秋色〟桜?

現在も東京の桜の名所として有名な上野公園周辺は、江戸時代から八百八町で随一のお花見スポットでした。
 人気の理由は、沢山の種類の桜があったこと。いち早く咲く寒緋桜につづいて様々な桜が咲き続け、三月中はずっと
お花見が楽しめたんです。
 
 中でも有名なのが、清水観音堂のそばにある秋色桜と呼ばれる枝垂れ桜。春に咲く桜なのに、なぜ〝秋色〟?どういうことなのかというと……。
 
 江戸時代初期、日本橋のお菓子屋さんの娘・お秋が、上野にお花見にやってきました。
 
 清水観音堂のそばにある井戸の周りでは、大人たちが飲めや歌えのドンチャン騒ぎ。お秋は幼いころから俳句を学んでいたので、この様子を見て

 井戸端の 桜あぶなし 酒の酔

と一句詠み、短冊に書いて近くの枝垂れ桜の枝に結びます。
 
 これを寛永寺の住職であった輪王寺宮が目にとめ、句の出来を絶賛。作者が13才の少女と知ると、とても驚ろかれたのだとか。
 
 この話が評判になり、清水観音堂の枝垂れ桜は、お秋の俳号である〝秋色〟にちなんで秋色桜とよばれ、上野のお花見の名物になったというわけなんですね。
 
 現在の上野公園には、ソメイヨシノを中心とした、およそ800本40種類の桜が咲き誇り、清水観音堂脇には、9代目の秋色桜が植えられています。
 
 秋色桜の満開はソメイヨシノより早いので、混雑を気にせずのんびり観賞できるため、私も毎年見に行っていました。
 
 しかし、去年は新型コロナウィルス感染拡大の影響で自粛。今年も緊急事態宣言延長で自粛。こればっかりは仕方ありませんね!
 
 気分を切り替えて、公園のすぐ近くの上野風月堂の季節限定商品で春を感じたいと思っています。今年はどんなラインナップかな?

本文イラスト:ほーりー

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