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第四十回

江戸時代の10月のイベントといえば

 10月のイベントとしてすっかり定着したハロウィン。上野風月堂でも可愛いハロウィンパッケージのお菓子が販売されます。
 
 実は、江戸時代にも10月にお菓子のイベントがありました。それが玄猪。亥の月(10月)の、最初の亥の日、亥の刻(夜10時前後)に、猪の子供に見立てたお餅=亥の子餅を食べる年中行事です。
 
 もともとは古代中国で無病息災のおまじないだったものが、平安時代に日本にもたらされて宮中行事として採用されました。
 
 やがて鎌倉時代になると、武士の間にも、猪が沢山子供を産むことにあやかった子孫繁栄を願う行事として浸透。
 
 江戸時代には玄猪が幕府の正式な年中行事となり、盛大に祝われるようになります。
 
 普段、大名が江戸城に登城するのは午前中ですが、亥の刻が夜10時前後にあたることから、この日だけは暮れ六つ、日暮れとともに一斉登城。将軍から五色の餅を下賜されます。
 
 江戸城の大手門と桜田門の前には、日暮れから夜中まで巨大な篝火がたかれ、イベントの名物になっていました。炎が暗闇の中で燃え盛り、御城の白壁やお堀が照らし出される様子はとても幻想的だったようですよ。
 
 また、猪が火伏の神である愛宕神社の使いであることから、この日に炬燵や火鉢など火を使う道具を出して使い始めれば火事にならないという俗信も生まれました。
 
 旧暦の10月最初の亥の日は現代だと11月中頃にあたりますから、ちょうど寒くなる季節なんですね。
 
 火事の多い江戸の町に暮らす庶民にとっても玄猪はとても大切な年中行事。炬燵や火鉢を出して、自宅で亥の子餅のかわりになる牡丹餅を作って食べ、火伏を願いました。
 
 時代によって様々な願いが込められてきた玄猪。私も今年は無病息災&疫病退散の願いを込めて、亥の子餅を食べようかな。

本文イラスト:ほーりー

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